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Boys For Pele(ボーイズ・フォー・ペレイ~炎の女神)

Boys For Pele(ボーイズ・フォー・ペレイ~炎の女神)

  • 発売日:1996年2月25日(日本国内)
  • レーベル:イーストウエスト・ジャパン

収録曲

  1. Beauty Queen / Horses
  2. Blood Roses
  3. Father Lucifer
  4. Professional Widow
  5. Mr Zebra
  6. Marianne
  7. Caught a Lite Sneeze
  8. Muhammad My Friend
  9. Hey Jupiter
  10. Way Down
  11. Little Amsterdam
  12. Talula
  13. Not the Red Baron
  14. Agent Orange
  15. Doughnut Song
  16. In the Springtime of His Voodoo
  17. Putting the Damage On
  18. Twinkle
  19. Toodles Mr. Jim (*JapanBonusTrack)

レビュー、メモ

おながのレビュー

ある音楽について文章で説明すること自体にそもそも無理があるのだが、殊にこの作品は1995年当時のTori Amosというひとり女性の心情をそのまま“音楽”という形で表現したもの(音楽に置換えたともいえる)であるから、複雑極まりない。

そんな作品を理解する上で重要なキーワードをいくつか列挙してみる。

1.失恋
失恋については有名な話だけれど、Little EarthquakesとUnder The PinkをToriと共同でプロデュースし、また7年間恋人として付き合っていたEric Rosseと離別している。

2.音楽的な自立
その失恋によってEric Rosseとは音楽上の関係も清算して、プロデューサーとして独り立ちし、音楽家としてのキャリアを再出発している。余談だがこの作品の制作に多大な貢献をしたサウンド・エンジニアのMark Hawley氏とToriは恋に落ちて1998年に結婚している。

3.Harpsichord
いくつかの曲ではHarpsichordを中心にして、音楽を展開している。(2)Blood Rosesではフランソワ・クープラン(Francois Couperin)顔負けの華やかなフレンチバロック風楽曲でHarpsichordの特性を活かしたすばらし曲に仕上げている。(4)Professional WidowではHarpsichordでロックするという前代未聞の快挙を成し遂げている。

4.教会
このアルバムはアイルランドの南東部にあるDelganyと、南部にある有名なCorkという二都市と、アメリカ南部ルイジアナ州New Orleansの3箇所でレコーディング作業を行なったと記録されている。Delganyでは教会を借り切ってレコーディングを行なったそうで、宗教的な雰囲気の漂ういくつかの収録曲について、やはりと納得できる。

5.魂の闇夜
魂の闇夜についてはToriの発言を引用する。「…多くの場合、女性は自分の陰の部分を見出すのではなく、陰のある男性と関わる傾向があると思う。誰にも陰の部分はあるのだけれど、女性は陰の部分にアクセスするのが難しいのよね。だから『Boys For Pele』は、女性として、また創造力を持つ者として、男性を通してではなく、自分の情熱を見つけるものだった。『Boys For Pele』は魂の闇夜だったけれど、不思議な美しさがある。…」(To Venus and Back国内盤CD解説書より)

挙げたキーワードを簡単に解説してみたが、未聴の方には是非一度実際に聴いてみて欲しい。今現在のToriとは随分異なる心情風景を垣間見ることが出来るはず。そして私のお気に入り曲が多いこのアルバムは、夜(深夜)に聴くとぐっと心に響く不思議なアルバムだと思う。

ゆうこげさんのレビュー

現時点でのToriの最高傑作(だとゆうこげは思います)。初めて聴いたときの衝撃たるや・・・。

どうやらこのアルバム製作中にプロデューサーであり恋人でもあったエリック・ロッセと破局。 その頃のToriの心理状態を映すかのように、冒頭のBeauty Queen~Horsesから彼女の混沌とした音世界に足を踏み入れてしまいます。ジャケットアートも非常におどろどろしい。。。

彼女いわく“ピアノの血族”という理由で今作でチェンバロを採用。M2 Blood Roses, M4 Professionl Widow,M7 Caught A Lite Sneeze, M12 Talula ではそのチェンバロが独特な世界をつむぎだしています。

ピアノは相変わらず素晴らしく、M6 Marianneでは自殺した友人のことを静かに歌い、官能的なピアノでキリストは女のコだった!と歌うM8 Muhammad My Friend、満天の星空が瞬いているようなピアノが圧巻のM9 Hey Jupiter....

また、時折入るインタールード(間奏曲)がいいスパイスに。中でもベトナム戦争で使われた枯葉剤のことを歌ったM14 Agent Orangeは秀逸。皮肉った歌詞に戦争の愚かさを思わずにはいられない(今日は折りしも終戦記念日・・・ちなみにその前のM13では墜落するパイロットを歌っています)。M17 Putting The Damage Onでは、遠くから響くようなホーンアレンジが哀愁を誘います。

この作品で初めてセルフプロデュースを行ったTori。何物にもとらわれず、自身の音楽的探究心のままに制作した結果、まるで映画のサウンドトラックを聴いているかのような壮大な作品となりました。

ということで、もうとにかく濃い!濃ゆいんです、このアルバム。全曲通しても本当に奥が深くて飽きない(実際10年聴いてます)。

まさに絶品の音楽美がここにあります。

ユキエさんのレビュー

私とトーリの出会いであり、おそらく今までに一番聴いてきたアルバム。新宿3丁目のバージンで試聴したのがきっかけ。初めの曲から自分と波長がぴったりあって、彼女の音の世界へ深く飛び込んだ。

このアルバムは青い炎を観ているよう。

私はキリストに夢中だったことがあるので思うのだけど(キリスト教ではないので、思い込みが激しい部分はごめんなさい)、炎は赤味がかった色をしていて悪魔的なイメージを受ける(エロス?)。キリストの愛はそれに対し、青のオーロラのようなものが天から降ってくるような感じ。

それでこのアルバムのトーリはというと炎のような悪魔的なものを出しながらも、その色はキリストの愛のように青い。よく耳を澄まして彼女の声を聴いてみると、優しい声をしている。

ノット・ザ・レッド・バロンの初めの泉が湧き出てくるかのようなピアノの音の美しさ。 マリアンヌの疾走感。馬に乗って森を走り抜ける女性のイメージ。彼女を走らせているのは、憑依されたような恋の情熱なのかしら。

プッティング・ザ・ダメージ・オンは昔付き合っていた彼氏が消えてしまった時に、冬の曇り空の下でよく聴いた。

AIRBAGさんのレビュー

ファースト、セカンドも聴きましたが、何か少し感情を抑え気味(それでも、激しい性体験の曲などもあり、圧倒されましたが)のように感じました。しかし、このサードでは解き放たれたように、ヒリヒリするような熱さと女性の感性というかしなやかさがビシッと伝わってきます。

基本はピアノ、アコギなどのシンプルな曲構成が多いため、この人の恐ろしいほど表現豊かな声が際立っています。(4)や(7)、(12)はダンスリミックスされ、シングルとして大ヒットしたのは、意外ではなく、楽曲の奥行きの深さを証明したものといえると思います。(7)はロックチャートにも登場しました。

ちなみに、ケイト・ブッシュとよく比較されますが、私は少し異なるタイプと捉えています。